近年、室内飼いの犬が増えてきて、犬がかかる病気も減ってきています。
ですがその中で犬が最もかかりやすい病気として、耳の病気である外耳炎が上げられます。
外耳炎は細菌や真菌、耳ダニの寄生、アレルギーやアトピーなどが原因となり発症しますが、適切な処置を行わず放置することで、中耳、内耳にまで炎症を引き起こすことがあります。
外耳炎は、耳のたれている犬種であるレトリバー系、また耳の中に毛の生えているトイプードル系、そして皮膚の弱いフレンチブルドッグがかかりやすいと言われています。
ですが、飼い主さんが定期的に耳掃除をし、耳の中を清潔に保ってあげることで防ぐことのできる病気でもあります。
外飼いしている犬であれば特に、必要なことです。
人間の病気でも同じですが、病気を早期発見、早期治療してあげることで、治療にかかる期間や費用を少なく抑えることもできますし、愛犬にかかる負担も小さく済みます。
そのため、普段と違う行動を取っていたり、耳から悪臭がするなどのちょっとした変化に気づけるようにしましょう。
この記事では、犬にかかりやすい外耳炎、そして症状が進んだ場合に発症する、中耳炎、内耳炎、耳ダニに関して、症状や原因、治療・予防方法を詳しく説明しています。
愛犬の行動がいつもと違うかも?と思った方はぜひ参考にしてみてください。

外耳炎
外耳炎とは耳介から粘膜までの部分に皮膚の炎症が起こることを言います。
外耳炎は犬が最もかかりやすい病気と言われており、痒がる仕草をすることが主な症状です。
外耳炎にかかった犬はしきりに耳を痒がって掻いたり、首のあたりを掻いたり、頭をぶんぶん振ったりといった行動をします。
初めて外耳炎にかかった場合は、飼い主さんも分かりにくく、気づかないことが多いようです。
外耳炎にかかりやすい犬種は耳がたれている犬種が多いようで、レトリバー系、コッカースパニエル系などに多く、特に湿気の多い梅雨時期に発症することが多いのです。
また、皮膚の弱いフレンチブルドッグや耳道に毛の生えているトイプードルの子も外耳炎にかかりやすいと言われています。
外耳炎は湿気や異物、細菌や真菌、耳ダニなどの寄生虫、アレルギーなどが原因で発症します。
原因によって治療方法は異なりますが、一般的には汚れが酷い場合には耳道内の洗浄を行い、その後は点耳薬の治療を行うそうです。
耳ダニなどの寄生虫が原因の場合は駆虫薬を使用し治療を行います。
外耳炎になりやすい犬種、またそうでない犬種の子でも愛犬の耳掃除は欠かさずに行うようにしましょう。
耳を清潔に保つことで予防することができる病気です。
症状
外耳炎の主な症状として、
- 首を振ったり、傾けたりする仕草をする
- 後ろ足で耳を引っ掻くような仕草をする
- 耳が赤い
- 耳が腫れている
- 耳から悪臭がする
- 耳垢が多くなる
などが上げられます。
外耳炎にかかると耳が痒くなります。
そのため耳を掻こうとしますが、どうしても耳に届かないことが多いため首を引っ掻くような仕草をすることがあります。
そうすると、首が痒いのかな?と思い外耳炎であることには気づきにくいのです。
原因により正確な症状は様々ありますが、外耳炎が悪化するにつれて耳から匂いがする、耳がただれてしまう、耳垢が多くなるなどの症状がでます。
さらに重度になってくると強い炎症が起きるため痛みが出たり、耳の付近を触るのを嫌がる仕草をしたり、耳道が腫れて耳の穴がふさがったりするなどの症状が出ます。
細菌感染の場合は黄色いドロっとした耳垢、真菌感染の場合は茶色い耳垢、耳ダニの場合は大量の黒い耳垢が出ます。
原因
外耳炎の原因は主に、細菌感染、真菌感染、アレルギー、耳ダニなどの寄生虫です。
また、シャンプーをした時に耳の中に水が入ってしまった、梅雨時期の湿気が多いジメジメした時期に高い湿度が原因となり不衛生な状態が続きますと外耳炎の原因となることがあります。
主に耳に毛がたくさん生えている犬種、耳が垂れている犬種ですと耳の中に湿気が溜まりやすく外耳炎にかかることが多いと言われています。
そして、ペットショップやブリーダー、譲渡会から引き取った犬は寄生虫に感染している恐れもあります。
引き取ったばかりの子の場合、すぐに定期検診を受けるようにしましょう。
そのまま放置してしまうと耳ダニが大量に発生し、他の犬に移ってしまう可能性もあります。
予防・治療法
外耳炎の場合、原因により治療方法は異なりますが、一般的には耳垢などの汚れを洗浄し、原因を特定し適切な治療を行います。
点耳薬や抗生物質、寄生虫が原因の場合は駆虫薬を使用します。
外耳炎は耳を清潔に保つこと、しっかりと駆虫薬を投薬することが大切です。
耳掃除はやりすぎてしまうと傷が付いたりする原因にもなるため、やりすぎは良くありませんが、愛犬の体質に合わせて定期的に耳の中を観察し、掃除してあげることが必要です。
また、シャンプーの残りカスや、シャンプーをした時に耳に入った水が原因で外耳炎となることもあるのです。
シャンプーをする際は耳の中に水が入らないようにしましょう。
そして、愛犬が首を掻いている仕草、しきりに頭を振っている仕草をしたら耳の病気も疑うようにしましょう。
中耳炎
中耳炎は中耳(ちゅうじ)の炎症の事を言います。
中耳とは、鼓膜とその奥の空間のことで、その部分は細菌が感染することが多いと言われています。
また、外耳から鼓膜を通り、中耳炎に発展することが多いようです。
犬が中耳炎にかかると、耳を痒がる、耳垢の量が増える、頭をぶんぶん振るなどの仕草をします。
外耳炎と同じように一見、「耳の病気ではなく、首などの皮膚が痒いのかな?」と勘違いしてしまう飼い主さんも多くいます。
これらの軽度の症状の場合は気づきにくいのですが、症状が悪化するにつれて耳から悪臭がしたり、耳が赤くただれたり、耳の中から膿がでたりといった症状がでます。
重度になりますと、痛みが出る、耳の周辺を触るのを嫌がるなどの症状がでます。
中耳炎の場合、外耳炎が悪化し中耳にまで炎症が起こるケースが多いようです。
中耳炎が悪化してしまうと、炎症を抑えるお薬や、細菌に効果のあるお薬を投薬しますが、内服薬でなかなか治らない場合には、鼓室という部分を切開する手術を受けなくてはいけない可能性もあります。
そのため、外耳炎になっている段階で症状に気づき、できるだけ早く適切な治療を受けさせることが大切です。
症状
中耳炎の主な症状として、
- 耳を痛がる素振りをする
- 頭を傾ける
- 頭を回転するように歩く(旋回運動)
- 頭をよく振る仕草をする
- 耳から悪臭がする
- 耳が赤く腫れていたり、ただれている
- 耳から膿がでる
などの症状が出ます。
上記でも説明した通り、中耳炎は外耳炎が悪化、進行して起こる病気です。
外耳炎の時と似たような症状がでますが、中耳炎になるともっと症状も悪化し、痛みが伴うケースが多くなります。
そのため、頭を傾けて歩く、回転させるように歩くなどの仕草を見せます。
また痛みで、触れられるのを嫌がる、さらには顔面神経の麻痺などの症状もでます。
顔面神経が麻痺すると、瞬きができなくなる、筋肉が弛緩しだらんと片側の顔が落ち込んだりといった症状が出ます。
瞬きができなくなるとドライアイになり眼病も併発する恐れがあります。
原因
中耳炎の原因のほとんどが外耳炎から生じるものが多く、中耳炎へ発展すると治療も困難なものとなります。
耳は外耳、中耳、内耳と分かれており、耳の穴の入り口から鼓膜までを外耳、鼓膜の奥を中耳、さらにその奥を内耳という作りになっています。
それぞれの部位で炎症が起きた状態を、外耳炎、内耳炎、中耳炎と病名で分けますが、内側に入れば入るほど症状も重くなるのです。
中耳炎の原因は主に外耳で起きた細菌による炎症が中耳にまで及ぶことです。
細菌の他にも真菌の繁殖、耳ダニなどの寄生虫、アレルギーやアトピー、腫瘍、植物の種などの異物が耳に入るなどの原因があります。
予防・治療法
中耳炎の治療は原因に応じて異なります。
細菌や真菌により炎症を起こしている場合は抗生物質や抗真菌薬、または抗炎症薬などの内服薬を投薬します。
耳ダニなどの寄生虫が原因の場合は駆虫薬を使用して駆除を行います。
ですが、腫瘍が原因の場合には耳を切開したりと手術が必要な場合もあります。
中耳炎を予防するためには、外耳炎の症状が生じている段階で飼い主さんが気づき、病院で診察を受けさせることが大切です。
そのためには定期的に耳掃除をし、耳に異変が起きていないかなどを観察する必要があります。
また、間違った方法で耳掃除やシャンプーをしてしまうとかえって外耳炎の原因ともなります。
耳掃除やシャンプーのやり方に不安な方は、獣医師さんやペットショップの店員、ブリーダーさんなどに相談するようにしましょう。
内耳炎
犬の内耳炎は、外耳炎、中耳炎が悪化し、ついに炎症が内耳に発展しまった状態です。
内耳には三半規管と言い、頭が回転するときの方向と速さを感知する役割のある器官があります。
その三半規管にまで炎症が及ぶと、姿勢が傾いてしまう、オスの場合はおしっこをする時に片足を上げるとフラフラしてしまうなどの症状が出ます。
また三半規管は脳に近く、眼球が揺れる眼球振盪を起こしてしまうこともあるのです。
内耳炎になると、症状も悪化しているため脳のMRIやCTが必要となります。
そうなりますと、全身麻酔が必要となり、犬にとっても大変な負担となってしまいます。
さらに内耳炎の場合、脳神経障害などを起こし、意識障害、歩行障害、痙攣、視力障害などと内耳炎は完治しても、障害が残ってしまう可能性もある怖い病気なのです。
また、耳に障害が残ってしまうと、お散歩をしている時も走ってくる車の音に気づけなかったりとあらゆる危険も回避できなくなるのです。
そのため、外耳炎、中耳炎が起きている時に一刻も早く適切な治療を受けさせることが大切です。
症状
内耳炎の主な症状として、
- 頭が傾いている
- フラフラしながら歩く
- 口を開けるのを嫌がる
- ドライフードをあまり食べなくなる
- 瞬きができない
- ヨダレが出る
- 眼球が揺れる
- ドライアイになる
などが上げられます。
外耳炎から中耳炎、そして内耳炎と炎症が進んでしまうと、耳の奥へと炎症が起きさらに脳の近くで炎症が起きます。
すると顔面神経が麻痺し、瞬きができなくなる、うまく口を閉じなくなりヨダレが出る、口を動かすと耳が痛いため、固い物が食べられなくなるなどの症状が出ます。
内耳に炎症が達することで三半規管にも影響を及ぼすことがあります。
歩く時の平行感覚などを保つ役割のある三半規管に影響が及ぶと、まっすぐに歩けなくなる、フラフラするなどの症状がでます。
原因
内耳炎の原因は、外耳炎、そして中耳炎が悪化し、炎症が内耳にまで及んだ状態のことです。
原因は、外耳炎、中耳炎と同じように、細菌や真菌の感染、耳ダニなどの寄生虫の感染、アレルギーやアトピーなどです。
その中でも原因の多くは細菌感染と腫瘍なのだそうです。
真菌や耳ダニ、アレルギー、アトピーなどは内耳炎へ発展することは少なく、中耳の炎症で止まる可能性が高いのです。
ですが、細菌は耳の奥の方へ進んでしまうことがあります。
そのため、細菌感染が原因で外耳炎、中耳炎が起きると、なにも治療を行わなければ内耳炎の炎症へと進んでしまいます。
予防・治療法
内耳炎の治療は原因により様々ありますが、内耳にまで炎症が進んでいるため全身麻酔をし、脳のMRIやCTといった画像診断が必要となることもあります。
もし、脳になんかしらの影響があるとすれば長期の入院や手術も必要となる場合もあります。
内耳炎の予防には、やはりできる限り症状に気づき早いうちに適切な治療を受けさせることです。
外耳炎から始まり、中耳炎、内耳炎と炎症が脳に近づくにつれて症状も悪化していきますが、外耳炎の段階で耳を痒そうにしていたり、頭をブンブンと振り回していたりと普段と違った仕草をすることがあります。
それらに早く気づくことで点耳薬や抗生物質のお薬で治すことができるのです。
耳ダニ
耳ダニは、「ミミヒゼンダニ感染症」といい、小さなダニが耳の中に寄生、繁殖することで起こります。
1匹のダニ自体はとても小さく0.3~0.5mmほどの大きさしかありませんが、その繁殖力は強く、放置してしまうと数も増えその分症状も悪化します。
耳ダニが寄生すると耳の中の耳垢や分泌液をエサとして成長し、卵を産み付けます。
卵は2~4日ほどで孵化し幼虫となります。幼虫は脱皮を繰り返し3週間ほどで成虫となり、メスの成虫は産卵します。
このように数を増やしていきますが、成虫の寿命は1~2ヶ月間ほどです。
犬が耳ダニに寄生されると、黒褐色の乾いた耳垢が大量に出るなどの症状がでます。
そして外耳炎などの炎症が起こり、痒み、時には激しい痛みで頭を振ったり、耳の周りを引っ掻いたりといった仕草をします。
ですが、耳ダニは洗浄や駆除薬を使用すれば比較的簡単に駆除することのできる病気です。
また、普段から駆除薬を投薬していれば防げる病気なのです。
最近では、フィラリア予防薬などに耳ダニの駆除が付帯されているものも多く販売されています。
症状
耳ダニの主な症状として、
- 黒褐色の耳垢がでる
- 耳を痒かがる仕草をする
- 頭をブンブン振る仕草をする
- 耳の周辺の毛が抜け落ちる
- 耳から悪臭がする
などが上げられます。
まず耳ダニが寄生すると、痒いようでしきりに首の周辺や耳を引っ掻くような仕草をします。
すると場合によっては、引っ掻いた部分の毛が抜け落ちたり、引っ掻きすぎて耳周辺に傷がついて赤く腫れていたり、出血したりします。
そして、症状がだんだん悪化していくと、外耳炎となりフラフラしたり、頭を傾けて歩いたりします。
また、耳ダニが寄生すると黒褐色の耳垢がたくさん付きます。
それらが外耳炎の原因となり、次第に外耳炎、そして炎症が内側へと進行すると中耳炎と悪化していきます。
原因
耳ダニかかる原因で多く上げられるのが、他の犬や猫からの感染です。
ダニに感染された犬や猫と体が触れ合うことでダニが乗り換えてやってくるのです。
また、耳ダニが見つかる子の多くは子犬が多いのです。
それは耳ダニに感染すると我慢できないほどの痒みを伴うため、大抵の場合は小さな頃に発見され治療を済ませているためです。
耳ダニは基本的に湿っている環境や劣悪な環境で成長します。
そのため室内飼いの犬に感染することはほとんどないと言われていますが、耳がたれている犬種の子にはきちんと耳掃除を行わなければ寄生されていることに気づかないこともあります。
室内外をしている方であれば、悪化してしまう前に定期的に寄生されていないかチェックをするようにしましょう。
予防・治療法
耳ダニは病院で治療を受けることが理想的です。
よくピンセットなどで取ってしまう飼い主さんもいますが、耳ダニは奥深くに入っている場合は取り除くことができず、卵からまた孵化してしまったりと根絶させることはできません。
そのため目に見える耳ダニだけを駆除しても完治には至りません。
病院を受診すると、適切な処置で耳垢やかさぶたを除去し、駆虫薬を使用しほぼ確実に耳ダニを駆虫することができます。
耳ダニは、定期的な耳掃除で予防することができます。
シャンプー後はきちんと耳まで乾かすなどし、耳の内側に水分を残さない、また食事管理や運動で免疫力を高めることも耳ダニの感染予防に有効です。
また愛犬が耳ダニに感染してしまったら他の犬へ移さないように、その期間は他の犬との接触を避けるようにしましょう。
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